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キムジュンギュ「歌を積んだ配達夫」

 東大門を左手にして清渓川を下って行って、現在はロッテキャッスルがそびえる手前のあたり、ここには昔、大きなガラクタ市場があった。
 清渓川が復元される前、清渓川のこのあたりは道路と高架道路との2段構えで覆われていて、それに沿って31アパートという半ばスラム化したアパートが、白い大きな屏風のように建っていた。
 31アパートの構造は主に、1階の通りに面した側が店舗、1階の裏と2〜3階くらいまでがテレビ・ラジオや冷蔵庫など家電製品のリサイクル工場、3〜4階から上が住宅、というようなものだった。
 31アパートの、道路に面して並ぶ店舗と、歩道はもちろん車線の1車線分を完全に占拠した露店商群によって、ガラクタ市場は形成されていた。
 古本、古ビデオや古服はわかるとしても、汚い古靴とか空き瓶とか、用途のわからない、ゴミかガラクタにしか見えない品物を売る露店商がたくさんいた。そのほか、日用雑貨から電化製品、乾燥ムカデのような漢方薬の材料、カブトムシの幼虫(これも漢方薬?)、大人のオモチャ(らしきもの)まで、ないものはないのではないかと思うくらいの雑多な「もの」と、それらを物色する雑多な「ひと」とがあふれていて、私がソウルでいちばん好きな場所だった。
 私がソウルに行く頻度は以前に較べるとめっきり減ってしまったが、その理由の一つが、このガラクタ市場がもうなくなってしまったということにある。

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 ↑ 2004年ころ、清渓川復元工事で高架道路が撤去されたおかげで、清渓川路の向かいのビルから31アパート全体をはじめて一望できたころの写真。一枚でおさまらないからつぎはぎしたが、規模のデカさが伝わるか…?

 * * *

 私がこの場所を気に入っていたのは、市場全体の雰囲気もさることながら、いわゆる「ポンチャック」などのCDやカセットを売る店が多かったということもある。価格も安かったので、ここに来るたびにジャケットだけを見て10枚、20枚と買っていた。
 なお、ポンチャックは基本的に低所得者層向けの音楽なので、媒体は安価なカセットが主流で品数も多いのだが、いかにゲスな音楽であろうと音質にもこだわりたい私は、ごく一部をのぞきCDばかりを買っていた。

 あるとき、露店のリヤカーに積まれたCDからいつものように10枚ほど適当に選んでから、店のおばちゃんに値段をまけてくれるよう交渉した。当然ダメと言われたが「こんなに買ったんだからいいじゃんちょっとぐらいー!」みたいに旅の恥はかき捨て的ヘタレ韓国語で粘ったらおばちゃんはしょうがねーなーみたいな顔でこのCDをくれた。

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 もともとLPレコードとして発売されたもののようだが、このCDの不思議なところは、ジャケットに「歌を積んだ配達夫(1)/ギター伴奏」とあるだけで、歌手の名前がどこにもないところだ。
 もしかしたら「歌を積んだ配達夫」ではなく、この歌手がヨンさまと同じ「裵」姓で「歌を積んだ裵・達夫」ということなのか?
 と、思ったらそんなワケではもちろんなくて、このCDをパソコンに突っ込んでiTunesで再生したら、曲名のみならずちゃんと「김준규キムジュンギュ」という歌手名も表示されたのでした、さすがiTunes!

>>못난 내 청춘

 当初は、これを聴いても、おもしろくもなんともなかった。やっぱりオマケでくれるだけあるよなーと思っていた。しかし、年に何度かずつ思い出して聴いていたら、少しずつ良くなってきた。
 最終的に「これは名盤である!」と判定を下すまでに、何年もかかってしまった。

 ジャケットにわざわざ「ギター伴奏」とうたうだけあって、歌手以上にこのギタリストがすばらしい。キューバの至宝、アーネストラングリンを彷彿とさせる。
 けれども真にすばらしいのは「뽕짝(ポンチャック)」という言葉の語源である「ポン、チャッ! ポン、チャッ!」というリズムをひたすらに刻み続けるセカンドギターだ!
 これはまさに、マイケルジャクソン「Beat It」で、バンヘイレンのギターソロには文句はないんだけれども、この曲のBeatのキレのよさは、スティーブルカサーが刻むバックのリフにこそ宿る。ということと同じだ。
 例えが大げさだがわかりやすいでしょ?

 * * *

 それにしても…、

 90年代末の通貨危機とそれを克服する過程で、アメリカ的に弱肉強食化していった韓国社会からは、このCDに象徴されるようなこういう「ユルーいノリ」は、完全に失われてしまった。
 私はそれが残念でなりません、って、あーこんな「昔は良かった」みたいな辛気くさいこと書きたくないんだけどなーホントは!
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by kobugimori | 2009-05-13 16:34 | ポンチャック

Korean Drummer

 この前の自殺っていう記事を読んで、私のことを心配してくれる人が何人かいて恐縮した。

 ありがとうございます、私は大丈夫です今のところは。

 気を取り直して、ぜひこれを見てください、最高だから。



↑ドラマーに注目
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by kobugimori | 2008-04-18 19:10 | ポンチャック

キャバレー韓流スター その2

 ペクスンテさんとは、最初に会った日に、ステージが終わった夜の11時ころから明け方4時ころまで一緒にお酒を飲みました。その際に、上記の他にもいろいろなお話を聞いたのですが、なにしろ酔っぱらってしまって、ここで再現できるほどちゃんと覚えておりません f^^;)
 余談ですが、このように初対面でも距離感0で親しく酒が飲めるというところも、私が韓国人を好きな理由の一つです。

 ペクさんのステージを実際に見て驚いたのは、歌いながら、リズムボックスやシーケンサーなどの操作、エレクトーンの伴奏をすべて一人でやることです。私は、伴奏する人と歌う人とは別だとばかり思っていました。
 一人でなんでもできればその分人件費が安くすむので、キャバレー側としてはやはり使いやすいのでしょう。ペクさんも、もともとはギターが得意だったそうです。光州で一緒だったペクさんの後輩、チョンウソン(전우송)さんも、サックスプレーヤーからキーボーディストに転向したそうです。
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↑ 左がペクスンテさん、右がチョンウソンさん

 こうして、歌も演奏もアレンジもすべて一人でこなすペクさんですが、今後の私との、電子メールでのやりとりを提案したところ「パソコンは全然ダメ、触れない」のだそうです。楽器のプログラミングなどのほうが、よほど難しいと思いますが…。

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 これらは、私が持っているペクスンテさんの作品の一部です。出した音盤は100枚を超えるとのことですので、それに比べれば微々たるものですね。
 右下の「カフェ」とカタカナで書いてあるのは、日本語と韓国語で交互に歌が入る、最近ときどき見かけるタイプのCDです。ただし、よくある妙な翻訳ものと違って、大変に格調の高い日本語に訳されているので、この点についてもペクさんに聞いてみたところ、ペンネーム고사리(コサリ、山菜のワラビの意味もある)という、日帝時代に大学まで行かれた年配の方の翻訳なのだそうです。
 その他の音盤も、どれも一定以上の水準で、なにしろ当たり外れが少ないのがペクさんの作品の特徴ですので、見つけたらぜひ買って聴いてください。

 最後に、韓国のキャバレーについて。
 韓国のキャバレーは、日本のキャバレーとは違って「踊るところ」です。だからもちろん女性の客も多く、私が見たところ客の半分かそれ以上は女性です。いわば「中高年のディスコ」といえます。中高年男女が、踊ってストレスを解消しつつ、トキメキと出会いを求めるところなんです。日本ではこんな業態は聞いたことがありませんが、韓国のキャバレーは昔からそういうことになっているんですね。
 店は、ケバケバしい外観から想像するより、ずっと敷居が低く楽しいところでした。トロット(韓国演歌)の好きな方、踊ってはじけたい方は、一度ぜひ行ってみてください。地方都市では昼間から営業しているところも多く、繁華街のはずれなどによくあります。
 料金やシステムは店によって違いますが、基本のビールと軽食つきで2万ウォン〜3万ウォン、女性は男性より1万ウォンほど割安のところが多いようです。ボーイさんが別のテーブルの異性の客をブッキングしてくれたりもします。
 光州で私が行ったところの入場料は、わずか1000ウォンでした。ブッキング等のサービスはありませんが、フロアーで踊るだけならそれ以上の料金はかかりません。同じ建物内に食堂や喫茶店、バーなどがあり、それぞれで別々に料金を払うようになっていました。こういうところなら、一日いても飽きませんね。
 どこも大抵は近くにモテルが並んでいたり、そもそも同じ建物内にモテルがあったりしますので、出会いさえあれば、すぐにデキるようになっています。
 貴女(貴男)にも、熱い出会いが待っている…かもよ!
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by kobugimori | 2007-04-03 22:54 | ポンチャック

キャバレー韓流スター その1

 甘く柔らかな歌声、深いビブラートが特徴のキャバレーシンガー、ペクスンテ(백승태、白承泰)氏に、昨年の光州に続いて、ソウル近郊のグンポ(軍浦)市のキャバレーで2度目のお目もじがかないました。

 まず、このジャケットを見てください。84年発売のデビューアルバムです。
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 やはり手描きのイラストは違いますね印象の濃さが。
 幅5cmくらいはありそうな鍵盤、口から遠く離れたぶっといマイク。それらのすべてが強い説得力を持って見るものに迫って来るようです。安易にパソコンに頼る最近のイラストレーターやデザイナー(私もその一人ですが)には、この絵をよく噛み締めてもらいたいものです。
 私はこれを、Tシャツにプリントしようと思います。

 それはともかく、実はこのレコードには歴史的な意味があるんです。キーボードの伴奏で歌謡曲をメドレーさせるという、日本でもイバクサなどでおなじみのスタイルは、このアルバムからはじまった(本人談)というのです。
 以下は、ペクスンテさんから直接うかがったお話です。

 デビュー前、81年ころから3年ほどは日本に出稼ぎに行き、赤坂や新宿の韓国クラブなどで歌っていました。日本人は礼儀正しくて、歌のリクエストの時などには、ヤクザのオヤブンからでさえ「先生、お願いします」のように先生扱いされたのが印象に残っています。報酬も良く、チップも多かったのですが、ほとんどパチンコに使ってしまいました(笑)。
 当時「オオシマヒサシ」という友達がいて、五木ひろしの公演に一緒に行ったりしました。彼の奥さんも、私が紹介した韓国女性です。しかし今では連絡も途絶えてしまい、どうしているのかわかりません。一度会いたいと思うのですが。
 よく食べていた、牛丼や味噌ラーメンの味が懐かしいです。

 帰国後、自分で機材を揃えて作ったのがこのレコード(前掲の写真)です。ステージを借りて、演奏も歌も一発録音です。当時は技術も未熟でしたし、録音機材も現在のように発達していませんから、今聴くと恥ずかしいですよ(笑)。
 それでも当時はこういうスタイルは珍しかったのでよく売れました。
 キーボードの伴奏で、歌をメドレーさせるというスタイルは、これが最初です。私が元祖です(笑)。

 その後出した音盤の数は、数えたことはありませんが、たぶん100枚は超えているでしょう。歌謡曲のメドレーですので、曲調やテンポを変えればいくらでもできるのです。
 実際のステージでも、地域や客層によってアレンジを変えます。おおまかに言って、全羅道や慶尚道の人は、早くて強いテンポを好みます。それらの地域のキャバレーは、音も大きいです。京幾道やソウルのキャバレーでは、それに比べれば、少しゆっくりめに、静かな感じで演奏したりします。

 日本でも活動していたイバクサ(이박사、李博士)は、私の後輩で、一時は同じレコード会社にいました。一緒に音盤を出したこともあります。
 彼のコミカルなスタイルは、韓国でも一時は人気が出て、テレビにもよく出ていましたが、すぐに飽きられてしまって、今ではあまり仕事がないようです(苦笑)。
 日本にはイバクサとともに「ポンチャク(뽕짝)」という言葉が知られるようになったようですが、これはトロット(trot、트로트)を卑下する言葉ですので私は好きではありません。

 夜が遅い仕事ですし、歌うのも体力がいりますから、疲れることもありますが、各地で、たくさんの人に会えるのが何より楽しいです。

 今年は、とりあえずはここ(軍浦市のデミョンキャバレー)にしばらく出演し、4月か5月ころ、また新しい音盤の録音があるかもしれません。


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↑ この画像、ご希望の方には、ポストカードサイズ350dpiのデータを差し上げます。
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までメールください。

 この項続きます。
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by kobugimori | 2007-03-31 14:10 | ポンチャック